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○東都スポーツ社
河埜「真田じゃなきゃダメだ」
河埜(34)がにべもなく言う。
結子「過去の栄光だけで生きてる選手を書いて何が面白いんですか。叩いたってひとっつも成長しやしません」
結子はメモを河埜のデスクに叩きつける。
メモ『先輩を立てる礼儀正しい山下。だがそれは単に、真田のネームバリューに叶わないことへの卑下でしかない』
突っ返す河埜。
河埜「今ここでお前が真田を書かないのなら、次回からコラムはオレが書く」
結子、河埜を睨みつけ、差し出したメモの裏に一気に書き付ける。
それを取り上げ、うなずく河埜。
河埜「真田の記事はみんなが読みたがるんだ。例え三振しかしなくてもな」
結子「みんな? 本当に?」
河埜「売上3割増。オールスター一般投票断トツ一位。それが証拠だ」
結子、河埜の持つメモを指さす。
結子「そういうつまらない演出が一役買った結果、そうなった」
河埜「求める客に応えてるだけだ」
結子「なら、リサーチしてきます」
飛び出していく結子。
○東都新聞 コラム『ファウルチップ』
三振しても絵になる真田。それは彼のホームランの桁外れな迫力がファンの頭に焼き付いているからである。だが現実の三振三昧が、かろうじて残っていた遠いホームランの記憶を塗り替えてしまうのは罪なことだ。
BY キッコ
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