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○同 外野席
グレートチキンズのベンチを見つめる結子。双眼鏡を取り出し、ベンチの中を見る。
ベンチの端で険しい顔をしている風間貢一(52)。バッターボックスへ向かう打者にも付き添って出て行き、檄を飛ばしている様子。
結子「いつもは選手の裁量に任せるとか言って放任のくせに」
バッターボックスに入った選手は、ファールで粘りに粘って、20球目にフォアボールを選び取る。風間もベンチも、異様な喜び方。相手のスイングスの選手たちが唖然とするほど。
結子「あの選手……いつもは早打ちでとっとと凡退するのに」
次の選手は送りバント。
成功するが、その選手も一塁まで全力疾走のアウト。
風間はガッツポーズまでして選手をたたえる。
結子「普段なら送りバントのサインなんか絶対出さないのに」
グレートチキンズの選手達は、みな切羽詰まった緊迫感が溢れている。
結子「――やる気だ。勝つためにできることを全て」
双眼鏡を降ろす結子。
結子「……なら、あたしのやることは、監督と最後の別れを惜しむことじゃない……」
結子は視線をグラウンドから自分の立っている客席に移す。
○同 グラウンド
0の並ぶスコアボード。
マウンドに立つグレートチキンズのピッチャーは、キャッチャーとのサインの交換に慎重。ピンと張った緊張感を醸し出す。
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