球場(スタジアム)に集う

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○同 スタジアム内   屋内モニターにスコアボードが映っている。   0ー0のまま7回に入る。   涙ぐんで電話を切り、ポケットにしまう松本がそれを見る。 松本「うそぉ……このところポカスカ打たれてボロ負けばっかだったグレチキが……」 ○同 外野席 熱狂している客席。応援団も熱が入る。 客1「どうしたんだ、今日のグレチキ。こんな競った試合ができるなんて聞いてないぞ」 客2「どうせまたダラダラした試合見せられるかと思ってた」 客3「こういう、必死さがモロに出てる試合を見たかったんだ」 結子、それらをメモっている。 ○同 グラウンド 打順通り、ネクストバッターズサークルに出てくる山下。ちらちらとベンチを見る。 真田がベンチのど真ん中から立ち上がり、バットを掴むのが見える。 だが風間はグラウンドを睨んだまま、何もアクションはなし。 山下はバットを置き、真田を気にしながら風間のところまで走っていく。 山下「……あの」 風間「前が出たらバントしろ。凡退だったら思い切って振り切れ」 山下「あ、はい……」 山下、ぶうんと大きな素振りを見せる真田をちらと見る。 山下「……あの、監督」 風間「何だ。何か不満か?」 山下「いえ……」 前のバッターが、惜しくも相手の好プレーでアウトになる。代打が出ることはなくそのまま山下がコールされ、真田が歪んだ表情でベンチにドカリと座る。 山下「――絶対にヒットを打ってきます」 山下は駆け出ていく。 ○同 外野席 観客達が一斉に立ち上がる。 山下がバットを振り抜いて放り出したところ。塁に向かって全力ダッシュしている途中で、打球が外野席に飛び込む。 山下の写真だらけの女性が、血眼になって打球を追いかける。が、別の客がそれをつかみ取る。 スコアボードに1の数字が入る。 ホームランに涌く客達。 ダイヤモンドを回る山下が、客席に手を振り、また歓声。 女性「山下さん、ナイスホームラン!」 女性は感極まって涙を流しながら山下に悲鳴のようなエール。 打球を捕った客がその女性にボールを投げ渡し、女性はまた涙。その様子に、客席は再び歓声。 初老の男がスコアブックに『観客在りのホームラン』と注釈を入れている。 古いユニホームの父子は二人で踊り出している。 微笑む結子。
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