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 年は二十二、両親はすでに他界している。学は高校までで、これまでは仲村渠財閥の清掃員として働いていた。今回仲村渠の老人に目をつけられ、佐久良の元にモデルとして遣われた。早いうちに両親を亡くしたせいか、金銭的な余裕がなくこれまで他人と密な関係を持ったことのない、清らかな体である。それが、琅の口から直接語られた彼の情報だった。 「ご両親は、何が原因で?」 「……黒い灰。初めてあれが降った時の、被害者だったんだ」 素のままで生活してほしいという佐久良の言葉を受けて、琅の口調は敬語からタメ語へと変わっている。 「そうか……」 黒い灰。いつからかそう呼ばれるようになったそれは、ここ五年ほど前から突然降り始めたものだった。どこから降ってくるのかも、何が原因でそれが降るのかもわかっていない。わかっていることは、未だ少ないのだ。 それがブラックダイヤモンドの粒子のようなものだということ。 夜、月夜にしか降らないということ。 建物の中にいれば被害を受けないということ。 それから、熱に弱く百度近い熱を当てると跡形もなく消えてしまうということ。 その程度しかまだわかっていない。キラキラと、月の光を反射しながら舞い降りてくるそれ。その光景はとても美しい。けれどその実、触れてしまえば待っているのは地獄絵図だ。 少しでも摩擦がかかれば、その灰は全てを切り裂く。一度肌についてしまえば、もうどうすることもできないのだ。振り払おうにも、少しでも動けば灰がその肌を、肉を、切り裂いてしまうのだから。わけのわからない恐怖に震える体。それによってさらに自分の体は血を流していく。それが、息絶えるまで繰り返されるのだ。
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