２ 引きこもり紳士

～ ＊ ～

すると、

「もしかするとね、小学生くらいの女の子と一緒かもしれないんだけど」

しかしそれならば尚更、記憶にはなく、俺は首を振るしかない。

だから、もちろん念のためにと名前と住所と学校名の確認をされた俺は、
あっさり解放された。

そして、老婆と少女。

祖母と孫を連想させるその取り合わせは、
耳を素通りするのに、あまりにも当たり前なほど自然過ぎた。

そのせいで、結局この夜の俺の記憶にこれは残らない。

その代わり、普段はおとなしいこの通りを埋める
似つかわしくない数の人影のお蔭で、
自転車から降りて残りの家路を進むしかなかった事だけがポツリと残った。