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それは、なにげない一言から始まった。
「ハッピーエンドって、信じる?」
春日が、そう言った。
俺はそれに、うまく答えられない。
意味がわからないと、下手なことを言ってどう受け取られるか、怖いからだ。
いつから俺はこんなに慎重に、臆病になってしまったのだろうかと情けなく思う。
その点向かいにいる幸人は、気楽なものだった。
「……って、ゆうかそもそも意味わかんないし。なに、ハッピーエンドは信じるもんじゃなくて、そこあるもんじゃね? あ、これちょっとカッコいい。つまりオレ、なにげにカッコよくね?」
「別にそうでもねーよ」
やっとそれで、ツッコめた。
言葉を発せた。
会話に入るのにこれだけ気を遣うなんて、一年前の俺だったら想像すら出来ないことだった。
月日の長さを感じる。
いや。
ハッキリ、気持ちの変化を実感してしまう。
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