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「おーよしよし、アキは酷いね」
春日は、その頭を撫でた。
「!」
自分の胸倉を、掴む。
動悸がバックンバックン激しくなっていた。
こめかみ辺りからダラダラと冷や汗が流れてるのを感じる。
動揺を知られないかどうかだけが、気がかりだった。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」
「うえーん、春日ー……って、ちょっと撫ですぎだって、ちょっとキモい」
ガタンっ、と賞状筒を落としてしまった。
"しまった"。
「ん……どしたん、明久?」
幸人が、怪訝な顔でこちらを見つめる。
心臓はもはや世界全体を揺らしそうなくらいの勢いだった。
とにかく俯き、視線を外してやり過ごそうとする。
「な、なんでも、ねぇよ……」
「大丈夫か、明久?」
顔を上げると、春日が目の前だった。
「な……あ、いや……」
近すぎる。
今度は左に、顔を逸らす。
勘弁してくれよ。
そんな幸せ……残酷すぎるよ。
勘弁してくれよ。
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