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俺は何処にでもいるありふれたフリーターだ。
夢を抱いて上京したものの、夢を叶える以前に生活に困り、掛け持ちのバイトをこなしている。
「こんなはずじゃなかったんだけどな...」
抱いた夢を追いかけて、その為に日夜働き続け、ようやく今のままでは奇跡でも起きない限り実現不可能だと結論を出した。
「はぁ...ここまで来てやっと気づいたのに、時既に遅し...か」
俺はため息を吐き、寒空を仰ぎ見る。
「どっかに奇跡を起こせる万能な何かがあればいいのに...」
途方に暮れながら、深いため息と共に俯きながらゴチるように呟く。
『人間よ...主の願い叶うとしたら、どうする?』
「っ!?」
突然、聞きなれない女の声が頭上から降ってきた。
俺は内心飛び上がりそうになり、声のした方へと顔を挙げる。
「誰だ...あんた?」
俺の頭上にやたらと露出の高い、幼さの残る羽根の生えた少女が浮かんでいた。
『おや?驚かないのか?人間は我を見ると童扱いか、化物扱いされるんだが...』
「まぁ、正直あんたが化け物でも恐怖の大王でも、人生終わった俺にとっちゃさしたる違いはねぇからな」
おれは自嘲を込めて吐き捨てるように答えた。
『それはそれは、好都合で何より。我は悠久の時を生きる悪魔だ。アリスとでも呼ぶがいい』
アリスと名乗った少女は地面に降り立つと、俺を見上げながら偉そうに語り始めた。
『主よ、先程人生が終わったと言っておったが、我と契約すればやり直せるかも知れないと言ったら、どうするね?』
幼い顔の癖に、妖艶な...そして寒気のする様な笑みを浮かべて俺に手を差し伸べる。
「契約?って事は自称悪魔様のアリスさんは、俺に何かの対価を求めてるって事か?」
『ほう、察しが良いな。我は絶望した人間の魂を喰らうのが至上の喜びでな。主の絶望に釣られてここに来たわけだ』
「成る程、そんでもってさらに絶望させてスパイスを効かせようって訳か?」
俺はアリスの物言いの裏の真意を代弁する。
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