盾と鉾とオレと犬

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「『いつも優しい気持ちで生きていきたい』、だって」 「ん。全部のベンチに違う言葉がついてんだ」 「へえ、そうなの?」  声のあとに、風みたいなさりげなさで耳に唇が触れたのがわかる。思わず耳を押さえると、小さくフフッと笑ってみのりが離れてゆく。遅れて顔面に熱が集まってくるのを感じた。 「それ、ジェラート食べながら周ってみたい。……流星?」  ほんと、時々子どもみたいだ。敵わない。全部もってかれる。 「わかった。行こ」  悔しいから前のめりで立ち上がって前のめりでずんずん歩く。 「流星、ねえ、なにかあった?」  橋のたもとですぐに追いついたみのりがサラッと訊いてくるから、驚いて一瞬だけ足がもたついてしまう。 「なんで」 「いまちょっと泣きそうな顔したよ?」 「……別に。気のせいじゃん?」  恥ずかしさに目を伏せた先、落ち葉が音もなく水中へと吸い込まれてゆくのが見えた。 image=497057962.jpg
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