盾と鉾とオレと犬

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. .   ☆  いちょうの葉が黄色く色づいているのを眺めつつ、オレは空の隙間の向こうにある未来について考えてみた。いちょうの黄色と黄緑の間から覗く空は、不恰好に切り取られていてまるで整然としていない。オレの未来もきっとこんな感じ。突き抜ける青のような想いだけはイッチョ前で、かたちなんて全然美しくない。時々はキラキラ輝いていればいい。ほかにはなにも望まないから、みのりにずっとそばにいてほしい。  十一月下旬という微妙な時期に会うことになったのは、みのりの休みの都合だ。本当はクリスマスイヴにかっこよくプロポーズしたかった、と照れ笑いをしていたっけ。東京の大学に進学したオレのバイト先で店長をしていたのがみのり。いまでは出世して本社勤務になっている。付き合いだしたのは、例の事後がきっかけだ。Uターンで広島の企業に就職しても別れの危機は一向に訪れず、比較的動きのとりやすいオレが定期的に東京へ行くことで交際を保ってきた。  平和記念公園のなかでオレの一番のお気に入りは、元安川に沿うように設置されているベンチだ。振り返れば平和の灯の台座がチラ見えし、前を向くと前方左方向に原爆ドーム。川の澄んだ流れを感じながらぼんやりと座っているのが好きで、高校生の頃も、街で歩きつかれると横道を逸れてこの場所へよく来ていた。当然、わんすけとのデートでもお馴染みのコースだった。観光客にとっては厳かな場所でも、地元に住む人間にとっては並列で憩いの場としてのイメージが強い。春になれば有名なお花見スポットにもなる。  ここへ来るのは久しぶりだった。今日は観光客も少ない。ベンチに腰掛けて大きく伸びをした瞬間、目の前を清掃員の自転車が通り過ぎていった。パンパンに落ち葉の入ったゴミ袋を片手に提げ、器用に運転している。懐かしさがこみ上げて、ふいに負けそうになった。 「流星?」  わきあがるなにかを押さえつけようとしたタイミングで、おじさんが走り去ったのとは逆の方角から声が掛かる。何気なく振り向いてから、オレは凍りついた。
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