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祭礼の終わったあと、行方不明だった弟と先輩が印旛沼で見つかった。 酔っぱらって、溺死したとのことだった。 事故じゃない。 分かってる。 当事者がどうなったのかは、いまだに分からない。 ダメなオヤジは、ひたすら悲嘆にくれて、お話にならなかった。 冠治のお父さんや、近所の人たちが葬儀を取りしきってくれた。 南くんが痛めた腕を吊っている。 もう、よそ者じゃない。 麻美ちゃんは、いない。 転校したって聞いたけど、本当だろうか。 ひさびさ会った親戚には、 「本当に…みのりちゃん?」 と何度も聞き返された。 骨となるのを待つ間、遠くの席に座っている冠治に目をやった。 酔っぱらったオッサンのビールの誘いを丁寧に断っている。 「中学生なんで」 そう私たちは中学生。 だけど… 月はみていた。 【完】
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