2.解毒

36/37
前へ
/583ページ
次へ
「おれも行く」 聖衣子が朱実をかばってくれたこと、そんな大事なことを置き去りにして、朱実は真実を突きつけられるのが怖くて逃げていたかもしれない。 受けとめているふりにすぎなかった。 紫己の言葉に、これから、という未来が見えた気がした。 「うん。お父さんをくれて、紫己のお母さんのことも、わたしは紫己から救われてるだけ。夢見ても大丈夫。夢からならわたしも紫己を救えるから」 「ああ」 短い返事は心底からあふれたため息のようだった。
/583ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1395人が本棚に入れています
本棚に追加