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画面のなか、いま紫己が座っているソファで、朱実は無防備に躰を開いている。
胸の上に被さる男は紫己ではなかった。
目をつむった朱実は時折、わずかに表情を変え、躰をふるわせる。
明らかに感じていた。
抱くのが紫己でないなら、そうなるはずはないのに。
――ムラサキ、抱いてくれるの?
途切れ途切れで力なく朱実がつぶやいている。
紫己と思いこんでいるからこそ
――と、果たして紫己はそう思ってくれるだろうか。
薬を使われて一時的に眠っていたことはなんとなくわかっていたし、紫己にもそうだったと教えられた。
それでも、桔平を紫己と間違えて感じていた自分が浅ましくてたまらない。
朱実は顔をそむけた。
「ちゃんと見てろと云っただろ」
すかさず紫己の声が飛んだ。
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