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窓を下げて車から顔を出しているのは静華だった。
静華とは、思いだしたくもない日以来、連絡はなく、もちろん会ってもいない。
いま頃なんだろう。
また、謀(ハカリゴト)でもあるのか。
無視していいこともなければ、応じたところで朱実のためになるわけでもない。
それでも、いつまでもここに立ち尽くすわけにもいかず、朱実は歩きだした。
「静華さん、こんばんは」
どんな顔をして会えるだろう。
本来、そう憂(ウレ)うのは静華のほうだと思うのに、朱実のほうがそんな気持ちにさせられる。
もっとも、桔平がしたことをどこまで知っているのか、
あるいは静華がすべて計画したことで知っていて当然なのか、
いずれにしろ人に知られたくない目に遭った当人の朱実からすれば、そのことに係わった人と顔を合わせるなど、当然、気まずさしかない。
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