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その言葉は耳もとで空回りして、脳内に浸透してくるまでに時間が要った。
かつてはその呼称で、あるいは似た呼称で呼ばれていたのに、いまになっても慣れることはできない。
ましてや、慣れる慣れない以上に、なぜ静華がそれを知っているのか。
一瞬、凍りついたようだった鼓動がやけに鮮明になって、破裂しそうに痛みだす。
「なんの……ことですか」
「調べたのよ。気になるじゃない、ムラサキがなぜ朱実さんに関心を持つか。
朱実さんはわたしたちとはまったく違うタイプでしょ。
世界が違うせいだと思ってたけど……。
何がムラサキを惹くんだろうと思って、その違う世界を覗いてみたくなったの。
そうしたら、ほんと、驚いたわ。
旦那さんの元妻を殺すなんて、元愛人がやりそうなことよね。
旦那さんが、やっぱり奥さんのほうがよかったって云ったのかしら」
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