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厳密に云えば、拘束などされていない。
仕事に出かけられるのだから逃げようと思えば可能であり、朱実の意思に任されている。
穿てば、朱実は逃げないと紫己から信じられている。
家のなかで繋がれていようが、鎖の長さに制限されているだけでなんの束縛もない。
紫己は朱実の不幸を望んでいても不健康を望んでいるわけではない。
まどかに会いにグランドケアを訪れた日は、朱実が脱水症状を起こしていないか心配していたらしかった。
三日後、これで好き勝手に飲み食いできるだろう、と云い、鎖の長さはいま変えられてキッチンまで余裕で行ける。
朱実への接し方がぞんざいに変わろうと、紫己の本質は半年間に朱実が見てきたものと変わりない。
確信できる。
なぜなら。
朱実は不幸ではないから。
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