5.一つしかない選択肢

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とたん、洗っていたりんごを流しに取り落とし、朱実は足をもたつかせながら後ずさった。 「やっぱり見てたんだな」 紫己は感情のこもらない声でつぶやいた。 実際は普通に声を出していたのかもしれないが、朱実には遠くで聞いているようにしか聞こえない。 紫己の手から目が離せなかった。 紫己はゆっくりとカバーを外していく。 「だめっ。来ないで!」 一歩も動いていない紫己に向かって訴えるにはおかしな言葉だ。
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