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紫己は、乳白色の地に花模様を施したボーンチャイナの柄を握り、金属の刃をかざして見せた。
それは、友里花の胸を貫いたナイフだった。
――いや、それは警察にあるはずだから、似たナイフか。
「教えてくれ、何があったか」
紫己が一歩踏みだしたとたん、朱実はまた後ろに下がった。
けれど、背中はすぐ壁に当たって行き止まる。
少しでもナイフから逃げようと、朱実はその場にしゃがみこんで躰を縮めた。
「朱実」
「……知らない。……わからないの」
あのとき起きたことは憶えている。
なぜそうしなければならなかったのか、わかっている。
けれど、なぜそうなってしまったのかがわからない。
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