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七月の最終日、外は雲一つなく快晴だ。
床にぺたりと座った朱実からは、外を見ても空しか見えない。
空調の効いた部屋からは清々しく見えるが、実際は朝にもかかわらず、すぐに汗ばむほど暑いに違いない。
「朱実」
ダイニングテーブルに座った紫己が、足もとで朝食を取る朱実にりんごを一切れ差しだした。
一昨日、結局は食べなかったりんごだ。
朱実が手でつかもうとすると、紫己はさっと手を動かして避ける。
そしてまた目のまえかざされる。
朱実は口を開けてりんごをかじった。
ペット扱いでも一緒に食べられるぶんだけ、ささやかでもうれしい。
そう感じながら会話もない朝食を終えて、片づけも終わった。
朱実はベッドルームに向かう。
すると、日曜日だというのに紫己はスーツを着込んでいた。
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