5.一つしかない選択肢

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会話は咬み合っていない。 紫己は取り合わず、うっとおしさを払うように首をひねると、朱実の横をすり抜けていった。 朱実はあとを追っていき、紫己がリビングに置いたビジネスバッグを持って玄関に行くのを見守った。 「紫己」 ただ呼んでも紫己が振り返ることはない。 「紫己、愛してる」 思っていたとおり、靴を履いた紫己はゆっくりと振り向いた。 睨みつけるような鋭い視線が向けられる。
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