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「紫己が軽薄だって云うのもわかる。でも、いまわたしが紫己を愛してるって感じることに嘘はないから。だから心配してる。たまには家でごはん食べて。躰を休めなくちゃ。病気になってほしくないの」
「待たれるのは嫌いだって云っただろ。愛もいらない」
紫己はひんやりとした声で拒絶すると、いま云ったことは本音でこだわりは欠片もないと見せつけるようにすっと背中を向けた。
「わかってる。どっちもわたしのわがまま。いってらっしゃい」
云い終えたのと玄関のドアが閉まるのはどちらが早かったのか。
あと二十四時間。
紫己と暮らす期限はそれだけしか残っていない。
朱実が自分で課した。
その二十四時間のうちにも顔を合わせている時間はごくわずかだ。
紫己の姿がドアの向こうに消えても、しばらく朱実はそこに残像を見ていた。
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