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夜になって八時をすぎても紫己は帰ってこない。
遅すぎることはないが、時間がたつにつれて朱実は、有言実行するか、待たないほうがいいのか迷った。
結局は迷っているうちに九時になって紫己が帰ってきた。
待っていたことに怒ることはなく、ただ不機嫌そうに、食べろ、と紫己はダイニングテーブルの下の床を指差した。
そこはペットの位置であり、即ち、一緒に食べるということだ。
ありがとう、と云うと露骨に不快な顔を見せた。
けれど、朱実のわがままを聞いて紫己が夕食に付き合ってくれることがどういうことか――
紫己の根本に朱実への不快さはない。
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