5.一つしかない選択肢

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紫己が以前、嫌いだと云ったのは、待たれるのではなく、待つこと待たせることだ。 穿てば、紫己は嫌になるほどだれかを待って、待たされていたのだ。 その相手が母親なら、それはもう永久に終わりは来ない。 紫己の鎖はたぶん友里花に繋がっている。 紫己はやさしい。 だから苦しむのだ。 今夜も紫己は夢を見ている。 夜中、朱実の悪夢とシンクロして、彼女の呻き声がリアルに聞こえた気がした。 ハッと怯えて目覚めると、それは紫己の呻き声に変わった。 紫己が云う『いい思い』していた間も紫己は夢を見ていたけれど、だんだんと間隔が狭まって、そしてうなされ方もひどくなった。 紫己は眠っているときもけっしてくつろげていない。
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