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紫己はやはり知られたくなかったのだろう、つい紫己が嫌う言葉を口にしてしまった。
あらためて、苦しめている原因は自分だと朱実は自覚する。
打ち明けたほうがいい。
朱実こそが、紫己が本当に憎むべき相手なのだと。
憎むことを復讐することを、紫己が後ろめたく思う必要はまったくないということを。
けれど、いざ伝えるのは難しい。
もう未練も意味がないのに。
二度と会ってはならないのだから。
「……はい」
紫己はいまはもう、奉仕させるだけで朱実を抱こうとしない。
抱きしめられたい。
せめて、はだけた分厚い胸に頬を添えて眠りにつきたい。
そんな未練を切り捨てて、朱実は後ずさってベッドからおりた。
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