6.手遅れのアイ

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 6.手遅れのアイ

紫己、愛してる。 残響が耳の奥でざわついている。 昨日の朝、訴えるように。 悪夢にうなされたあとの夜明け前、うわごとのように。 そして、今朝もまた朱実は口にした。 紫己が嫌がると知っていて、なぜ急に云いだしたのか。 今朝は、不快感を露骨にして睨みつけたというのに、朱実は、たとえ銃を突きつけられてもびくともしないといった芯の強さと静けさを感じる笑みを見せた。 脳裡からその残像が消えることはない。 ざわつくのは耳の奥だけではなく、脳裡は支離滅裂な思考を繰り返し、そして胸騒ぎを伴う。 もっとも、朱実に出会った瞬間から紫己に平穏はなく、そのざわめきがどの感情に属するのか、原因を探ることも難しい。 ただ、朱実を幸せにしない―― と、自分がやるべきことがわかっていただけだ。
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