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「紫己、わたしがこう云う資格なんてないけど……紫己にラクになってほしいから……。紫己は、お母さんがうれしそうにしてたって云ったよ。きっと裏切りだとか思ってない。そんなことを思ってたら、わたしから紫己を守るなんて云わない」
安易だと怒ることもなく、紫己は黙りこんだ。
地上から離れた場所は雑音もなく、お喋りがなくなるととことん静かだ。
紫己は何年もそうしている。
傍にいたいという気持ちは果無い。
「紫は朱のまがいものだ。逆らって朱を支配しようとしたのに手に入らない。だから朱に染まりたがるのかもしれない。出ていく気なら、今度こそ、おれは朱実をこのまま拘束する」
「紫己、だめなの」
「おれがいない間に好きな奴ができたのか」
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