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朱実は目を瞠(ミハ)る。
「……紫己……」
「朱実のためにじゃない。きっかけにはなったのは否定しない。おれは開発者に戻る。もともと表に立つのは性分じゃない。実質、運営で中心にいたのはおれじゃない。進武にすべて譲る。引き継ぎもほぼ終わったんだ。今度の株主総会で決まる」
朱実はしばらく放心したように紫己を見つめていた。
「でも……」
「なんの肩書きも持たないおれにだれが関心を持つ? 朱実にだれが関心を持つ? 川合静華か?」
紫己はすっかり承知していた。
それなら、いびつなふたりでも一緒にいられるのか。
朱実はそんな期待を覚えてすぐさま押し殺す。
「知ってるの?」
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