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「あの女は何もできない。いまの地位を失う気がなければ。たとえあったとしても、そのときはやり返す」
紫己の声には断固とした響きがあった。
「紫己……許せるの?」
「おれの束縛が怖くない?」
朱実の質問に紫己は質問で返す。
その質問への朱実の答えが紫己の答えになるのなら。
「それが紫己からお父さんとお母さんを奪った罰だったら、わたしはかまわない。わたしは……紫己を愛してるって云い続ける。そんな償いしかできないから」
「朱実はおれのものだ」
朱実が衝動的に手を伸ばしても跳ね除けられることはなく、紫己はそれ以上にあぐらを掻いた脚を解いて朱実を掻き抱いた。
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