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「……確かに、人の心は移り変わるものかもしれません。でも。――――それでも、変わらないものもきっとあります。酒田さんが信じられないというなら、俺がそれを証明します。絶対に、俺の思いは変わらないって。だから。…………半年、待ってくれませんか」
ただひたすら、まっすぐに。心の内を語る有馬をじっと見つめた後、酒田はまたほろりと涙をこぼした。それを皮切りに、抑えていたものが一気にあふれ出したのか、次々と頬を涙が伝っていく。
「有馬君は……、優しそうに見えて、酷い、人ですね。……約束が破られても、傷つくのは俺、一人だ」
「すみません」
「そうやって、約束しても。……それが守られる、保証なんて、どこにも、ないっ、のに……っ」
ドン、と体に鈍い衝撃が走った。目の前には、有馬の胸に縋りつく酒田の姿があった。酒田はそのまま顔をうつむけたまま言葉を続ける。
「……そんな風に、言われたら。有馬君のこと、信じようって、思っちゃうじゃないですか……っ!」
「――――――っ!」
涙ながらに言われたその言葉が耳に届いた途端、考える間もなく衝動に身を任せて、酒田の体を掻き抱いた。そのまま、子どものように声を上げて泣く酒田を力いっぱい抱きしめる。少しでも、愛しい人の不安が消えるようにと。
「ごめん。でも――――ありがとう」
静かにそう、酒田の耳元に声を落とし。あとは何も言わず、有馬はただひたすら自分の腕の中で泣く酒田を抱きしめた。
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