6日目

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 外から鳥のさえずりが聞こえてくる。カーテン越しにうっすらとさしてくる日の光に、もう夜が明けることを感じ、うっすらと目を開けた。うまく眠れていない体は昨日の疲労を引きずったままだ。そのうえ、考え過ぎたからか頭すらぼんやりしている。何度も何度も昨日の夜からぐるぐると答えを出せず考えているのは、酒田のことだ。玄から、酒田を頼むといわれた時、まるで娘を嫁にやる父親のようだと思った。けれど、酒田は男で、有馬も男だったから。その言葉にそれほど大きな意味があるとは露ほども思っていなかったのだ。それなのに。話すことによって傷つくことにはもうなれたというように、にこりと接客用の笑みを浮かべて、酒田は告げた。 『俺の、性的対象者は、男性です 』 つらつらと、慣れたように紡がれる酒田自身についての話に、有馬は何も返せなかった。自分のことを異端だと、気持ちが悪いといわれることを許容できるという酒田に対して、いろいろな感情が胸の内で渦巻いていたのに。何一つすら満足に言葉にすることができなかった。君は普通の人間だからそう言えるんだよ、そう言われてしまえば、何も言い返せないだろうことが分かっていたから。 「…………」 酒田はいったい、自分に何を望んでいるのだろう。それが分からなくて、思考はぐるぐると迷宮から出られずにいる。 酒田と距離を置くこと? そうして今の酒田との関係をなかったことにすること? この島での出来事を風化させて、さっさと忘れてしまうこと? 残りの数日を今までと何も変わらず、何もなかったように過ごし、いつかは思い出になって、そのまま色あせて全てを忘れていく? ”……そんなこと、できない。――――それ以前に、したくない” この島で見てきたもの、触れてきたもの。それらはとても美しいものだった。そして、必ずその記憶の傍らには、酒田の存在がある。
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