6日目

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 朝食を終えてすぐは共にどことなく照れが残ったせいか、会話にもぎこちなさがあったが、それも 店を開いて動き始めれば何処かへいってしまって、二人の間には気まずくなる前と同じ空気が流れていた。オーダーをとって、それを酒田に伝え、料理ができたらそれを客のところへ持っていく。以前バイトでしていたウェイターの経験をいかせたおかげか、それほど大きなミスをすることもない。その代わりに小さなミスは結構な数してしまったけれど、そこはさすがこの島の島民というか、酒田の店の客というか。笑ってすべてを水に流してくれた。 「……疲れましたか?」 客足が途切れたところで人行き着いていると、酒田にそう声をかけられた。 「うーん、疲れてない訳じゃないんすけど、昨日までの農作業に比べたら全然という」 「確かに。有馬くん、接客業に慣れてる感じでしたもんね。バイト経験があるんでしたっけ?」 お昼をとっていなかったため、二人ぶんの簡単な食事を用意しながら、酒田がそう続けた。 「そうです、短期立ったんですけど、チェーンの飲食店で働いてたことはあるんで。でも、久しぶりすぎてあんま役にたてなかったっすね」 「そんなことないですよ。今日はいつにも増してお客が多かったから助かりました。いつもはこんなに人が来ることないから、ひとりでさばけるんですけど。みんなどこで聞いてくるのかなぁ、今日は有馬くんがいるってどこかから聞き付けて、有馬くん見たさにみんな来てたみたいでしたよ」 「なんすか、それ。俺、動物園のパンダ状態っすか?」 おどけたようにそういうと、酒田がくすくすと声を出して笑った。 「ある意味、そうかも。ヨネさんをはじめとする有馬くんに関わった人たちが、みんなよってたかって有馬くんがいい子だっていうから、今もう有馬くんこの島で有名人ですよ」 そんな酒田の言葉に危うく口に含んだお茶を吹きそうになった。
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