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「――――有馬君、どうしたんですか?顔が怖いことになってますよ?」
「っ、いえ、何でもないっす!ちょっと考え事してただけなんで。やっぱうまそうですね、酒田さんの料理。いただきます!」
「どうぞ召し上がれ」
一口食べた料理の味に自然と頬が緩む。
「んーっ、やっぱうまいっす!俺、この旅が終わったら普通の食事じゃ満足できねーかも」
少々オーバーではあるけれど、それは確かに有馬の本音だった。何気なくそう告げ、次の一口を口へ運ぼうとしたとき、ふと目線を上げれば。
「――――え?」
顔を真っ赤にして手で口を隠した酒田の姿がその先にはあった。その過剰ともいえる反応に、こちらまで恥ずかしくなってくる。
「っ、もう、有馬君、天然の人たらしか何かですか?セリフがベタすぎて、こっちが恥ずかしくなったじゃないですか」
「えっと、なんかすみません?」
「……まぁ、えと、でも、嬉しかったです。――――――ほら、早く食べましょう!」
そう言って赤い顔のまま食事を再開する酒田に対して、かわいいと何も不思議に思わずに思ってしまった自分の気持ちには気づかなかったことにして、有馬は食事を再開した。きっと今自覚したら、今日の自分は使い物にならなくなってしまう気がしたから。
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