発端

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 父さんが死んだ。  兆候もなく、突然。  死因は交通事故。相手のトラックが居眠り運転で信号無視をした。  その場に居合わせた数人が巻き込まれて死亡。  犯人は現行犯逮捕。そして私達は途方に暮れた。  一番泣いたのは母だった。私は現実が直視できずに、ただ泣いている母を見ているだけだった。  心の傷を負った母は自殺未遂を繰り返し、身体はボロボロになった。  自傷痕、首に痣が消えることはなく、いつしか家から出ることはできなくなっていた。  否応なく私は高校を辞め、働きに出ることにした。  務めた職場は待遇がよく、中卒の私にも社員という立場を与えてくれた。 「万智、お母さんね、疲れちゃった」  そう言い残し母はこの世を去った。最後は首吊り。私が家に帰ると変わり果てた姿で吊り下がっていた。  私はどうすればいいのかわからず、ただ叫んだ。 「あ……あぁ……母さん、母さん……いやあああああああああああああああ」  騒ぎを聞きつけた近所の人が警察に通報。そのまま遺体を病院へ搬送した。  程なくして、私は会社を退職した。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!