不幸本番

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 たまには外に出なさいと医者に言われ、車椅子に座り病院の庭に出た。陽の光は眩しすぎて私は景色を見られなかった。 「ねぇ、お姉ちゃんどうしたの?」  そんな声が聞こえ、私はふと正気に戻る。子供の声はよく通り印象的だった。 「ぁ……あ……私は……?」  何年かぶりに声を出した気がする。看護師さんも驚いていた記憶がある。その声は弱く、掠れていた。それでも数年ぶりに正気に戻った気がした。 「あ、あ……父さん、母さん……ここはどこ……? 私は誰……?」  頭のなかは真っ白で、当時の記憶がフラッシュバックする。ぐるぐると回るのは泣いている母さんと、吊り下がっているもの。そして目の前は真っ赤に染まり、子供の顔までもが崩れていく。  ――――あぁ、崩れているのは景色ではなく、私の方だ。  車椅子から前のめりに崩れ、私は数年眠り続けた。
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