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階段を静かに降りると、廊下を通り抜け居間へと戻る。
足取りは重かった。
社長からは大目玉をくらうに違いない。このバイト代で冬休みにスキーに行こうと思っていたが、その計画もパーだ。
居間に戻るとぼんやりとしたオレンジ色の照明が点灯しており、暖炉を背にして女性らしい細い八の字のシルエットが浮かび上がった。
おそらく社長夫人だろう。
「どうも御苦労さまでした。」
「いえいえ、どうせクリスマス・イブを持て余してましたから。」
「あの子。一昨年のクリスマス前にお友達からサンタさんは絶対お父さんだよと言われたみたいで。」
「はあ。」
「それ以来、我が家では毎年サンタさん役を社員の方に頼むことにしたんです。でも、カンのいい子ですぐ見破ってしまうんですの。」
「はあ。」
「だからその・・・、あまり落ち込まないで下さいね。」
その伏せがちの長い睫毛がハッとするほど美しい。少女の顔立ちは、母親譲りだった。
「話していて、とても気立ての良いお譲さんでしたよ。それでは、私はこれで。」
大きな暖炉の方へ向かい薪入れ口の蓋を開けた。ひんやりとした外気が吹き下りてくる。
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