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「お前が俺の漫画察時に、時々くっつけてく謎の漫画だよ。結構面白いけど、あれ、本当は何の雑誌に掲載されてるんだ? それとも、お前の友達の誰かが描いてるのか?」
そう尋ねても、従弟はひたすら首を捻るばかりだ。
とぼけるの上手いな、コイツ。だったらいっそ、現物を見せるとするか。
証拠はあるんだぞとばかりに、俺は従弟に今まで捨てずに残して置いた雑誌を見せた。でも、それを見ても従弟の怪訝な様子は変わらない。どころか、ますます訝しむように俺を見てくる。
「その漫画って、どれ?」
「どれって…」
これに決まっているとばかりに、俺は巻末に強引に取りつけられた漫画雑誌を見せた…見せようとした。
でも、そこにあの漫画はなかった。取っておいた雑誌総てを見返しても、どれにも漫画は掲載されていない。普通に目次の頁があって、その後はすぐに裏表紙の紙だ。
「それ、何のイタズラ?」
逆に従弟の方から言われて、俺はその場こそ笑ってごまかしたが、不可思議さは消えなかった。
…これ以降も、俺が買った雑誌の巻末には、時々謎の漫画が掲載されていることがある。しかも続き物で、読むたび少しずつ進展しているのだ。
世界が荒廃しきった近未来で、仲間達と必死にその日を生きている主人公の、サバイバルを描いた漫画、その内容が、今回意外な方向に向かった。
主人公が事故に遭い、植物人間状態になるのだ。そして二年後、目覚めた主人公は、仲間達に平和な夢を見ていたと語り出した。
その、夢の中で主人公が過ごした平凡な日々は、何故か俺の生活そのものだったのだ。
次回、この漫画が掲載されたら、その内容はどうなるのだろう。その時、もしかしたら、俺が現実だと感じているこの世界は、すべて消えてしまうのではないだろうか。
ばかばかしいと思いながら、どうしても拭えぬ不安を胸に、俺は、雑誌の巻末にこの漫画の続きが乗ることを待ち侘びている。
見知らぬ漫画…完
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