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僕の手を包み込むようにして、佐藤君が手を重ねた。その手首には、僕がクリスマスに贈った時計が嵌められていて。
女性にアクセサリーを贈る男性の気持ちが、少しだけ分かったような気がした。
「佐藤君」
「はい」
「今度、一緒に旅行に行きませんか」
「え……」
「えっと、無理はしなくていいから。忙しくなければだけど」
「行きます」
「ほんと?」
「村上さんからそういうお誘いがあるとは思ってなかったので……。ちょっと驚きました」
「ああ、今日四谷さんと話してて、」
四谷さんの名前を出した途端、彼の表情が固くなる。
「瑞希さん……」
「何?」
「後で、お仕置きします」
「何でっ?」
食後に寝室に連れ込まれ、佐藤君の謎のお仕置きを受けた僕は、そのまま眠りに就いてしまった。
夢の中で、僕は佐藤君と旅行に来ていて。
きらきらと輝く海が、とても綺麗だった。佐藤君、と思わず呟くと。
耳元で、くすっと笑う声を聞いたような気がした。
end.
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