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「す、すみません……ですがこうしないと何時も貴方は逃げますから。陛下、後は僕にお任せ下さい」
気弱そうな微笑み方に漓朱は黄呀国の王は強い者が好きでは無かったのかと、聞いた話と違うと思ったのだが、琉貴がいとも容易く連れて行かれるさまにはっとする。
琉貴は本気で逃げようとして暴れていたのだ。そんな彼を幼子の手を引く感覚で軽々と進める何て、末恐ろしいものだ。
助けてと顔で訴える琉貴を尻目に部屋から出て行こうとした驪珀の背に、白葉の焦った声が飛んで来た。
「あっ……碧禮国の王よ、その人の子を確か漓朱と呼んでいましたね?」
「それが何だと言うのだ?」
「漓朱さん、先程落し物をしましたよ。……取りに来て頂けますか?」
漓朱を呼びたかっただけなのか、名を確認すれば驪珀などお構い無しに手招きする白葉。何時の間に拾ったのか、手の中には簪が煌めいている。
落とした記憶は無い。それもその筈、白葉は皆に気付かれぬよう力を使い手に入れていたのだ。
自分を拘束していた腕が緩まったのを確認した漓朱は、驪珀の気が変わらぬ内にと己の出せる最大限の早さで白葉の元へと向かった。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
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