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「きゃあっ」
躯が吸い込まれて行く。
離れてしまわないよう男は漓朱の手首を確りと掴んだ。
余りにも早く引き寄せられるものだから周りの景色が流れて行き、彼女の目が回ってしまう。
急に視界が真っ白になった。
だがそれは、意識が飛びそうになったからではない。
沢山の光が一遍(いっぺん)に目に入り込んで来たからだ。
軽い頭痛に見舞われて、自然に眉間に指を置き目を瞑(つむ)る漓朱。
「目を開けよ、漓朱」
鈴の音が聞こえる……。鼓の音も、人の声も。
男の言葉に従うようにして、彼女はゆっくりと瞼を上げた。
「わあ……っ」
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