捧げられたこの身

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  何かを頭から被せられ、彼女ははっとする。 「それを纏っておれ。……面倒臭い事になるからな」 そう、面倒な事になる。 彼は一度足りとも捧げられた女を持ち帰った事はなかった。 人を守護している。だが、人が余り好きではない。寧(むし)ろ嫌っているのだ。 だから毎回獣に襲われている生贄を見捨て帰っていた。 捧げて来たのだから人々の忠誠を認め、護ってやる。 だが供物を持ち帰ってはやらない。 それを何十年、何百年と続けていた龍神。 そんな彼が初めて女を持ち帰って来たのだ。周りが騒がない筈がない。 漓朱は金の糸で花喰鳥(はなくいどり)が描かれている白布を、顔を隠すように纏い、男の隣を歩く。  
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