捧げられたこの身

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  終始無言の二人。 俯いたまま歩いている漓朱の視界にはずっと、男の癖のない長い横髪がちらちらと映っている。 まだ誰ともすれ違っていない。顔を隠した意味があるのだろうかと思ってしまう程、誰もいない。 砂金かと思う程神々しく光っている土を踏み、漓朱は歩幅の違う男に必死に付いて行った。 不意に足が止まる。見上げる漓朱。 「此処が我の屋敷だ。……どうした?」 「い、いえ何も」 これは夢か幻か。科学が栄えたとされる時代の建物よりも美しく、漓朱は言葉を失った。 貝殻などが装飾され、真珠があちこちに嵌め込まれている。 この建物だけは和よりも洋に近い。 だが、和風な周りから其処まで浮いておらず、不思議な感覚に陥(おちい)った。
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