捧げられたこの身

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  白い壁は光が当たる度に乱反射し、眩しい。 少なくとも漓朱の十倍はある頑丈そうな門がゆっくり、ゆっくりと開いた。 「お帰りなさいませ、主様……って、あれれっ? 誰ですかその娘」 「此度の贄とされた娘だ。……良いから通せ」 「えっ!? 主様、主様が!? これは大変だっ、契約の準備をしてこなきゃっ」 ぱたぱたぱたと慌ただしく屋敷に戻り、侍女に何やら指示を出す翠(みどり)掛かった髪の、十八、九くらいに見える少年。 やれやれと云った風に息を吐いた男は、乱暴に漓朱の腕を引いて行く。 だが漓朱はそれ処ではない。彼女の紅色の眸は驚倒したように開かれっぱなしだ。 ――あれ、は角……? 屋敷の中の者全てに、今は絶滅した鹿と呼ばれていた生物のような角が生えているのだ、仕方がないだろう。 ――もしかして、この人にも……?  
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