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バッと音が出そうな勢いで男を仰ぐ漓朱。それと共に、被せらせれていた白布がはらりと床に落ちた。
「あ……」
彼には角がなかった。その代わり、他の者にはない刺青のようなモノが頬に刻まれていた。
森では暗く男の顔が余り見えていなかったから、彼女はまじまじと彼の顔を観察する。
光を放っているのではないかと思う程に白い肌。
薄い唇に、筋の通った高い鼻。
真っ暗でも美しいと感じたのだ。日の元では更に麗しい事だろう。
思わず顔を逸らした漓朱は、己に向けられている多数の目に気が付いた。
「本当に人の子なのかしら……?」
「えー? 人の子にしては顔が整い過ぎじゃない?」
「でもでもっ、今日は生贄が捧げられる日でしょう? 人以外有り得ないわよ」
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