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漓朱の美貌はこの男に引けを取らない。
一番美しい娘と有名だったのだから。天女のようだ、と……。
そんな漓朱が生贄となってしまったのは、巫女が彼女の名が書かれた貝殻を引いてしまったからだ。
勿論彼女に恋心を寄せていた男達は嘆き悲しみ、友であった女達は泣き崩れた。
それ以外の者達は自分の娘じゃなくて良かったと安堵したり、邪魔者が消えたと喜んだりした。
「あ、の……苦しい」
「落ち着いたようだな。琉貴(るき)、用意は出来たか?」
「はいはいっと、勿論ですよ」
一時離れていた先程の翠掛かった髪の少年が元気良く返事をし、真紅の盃に酒を注いだ。彼の用意した物を見て、やはり人間だったのかと騒ぐ周りなど気にも留めず男は冷淡な薄い唇を開く。
「漓朱よ、これでそなたの名を縛れるのは我だけとなる」
「え……? んんっ」
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