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痛みから上手く回らない脳で、漓朱は必死に驪珀の言葉を理解しようと努める。
――私の躯を、縛り付ける……? どういう意味なのか、良く解らない。
察しの良い彼女はこの痛みさえなければ、その意味を、深意すら理解していただろう。
声を出したいのに痛みのあまり唇を動かす事が出来ず、漓朱は悔し気に眉を寄せた。
そんな彼女の様子を見ていた驪珀は愉快そうに口角を上げ、冷たい口調で衝撃的な言葉を吐く。
「我の命にそむけば漓朱、そなたは――死ぬ」
――死、ぬ……? 漓朱の眸に不安が現れ、揺れ動く。
「これは契約という名の呪縛。……不服そうだが、契約をしなければ、そなたは他の者にも名を縛られる可能性があるだろう?」
つまり、色んな者の命令に逆らえず良いようにされてしまうという事だ。
それもまた一興と考えた驪珀だが、彼女を縛り付けようと他の者がこの領地にやって来るのはとても癪で。
それに、目の前で漓朱が苦しんだり泣いたりするのは面白いだろうが、自分以外の者でそうなるのは堪え難かった。
まるで、与えられた玩具を横取りされまいとする子供のような感情。
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