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「良いか、そなたを生かしているのは只の気紛れ。……今直ぐ抱こうが喰らおうが、そなたに文句を言われる筋合いはない」
何時でも殺せると、だから機嫌を損ねる事はするなと、そう言いたいのだろう。
漓朱は痛みのせいで眠りに落ちて行きたがる意識を必死に繋ぎ止め、やっとの思いで首を縦に振る。
「そう、素直にしていれば良い……」
首から手を離されほっとするのも束の間で、突如重なった唇にびくりと肩を跳ねさせた。
何が起こったのか、理解出来ない。だが、躯はそうではない。
「んっ、んん……っ」
甘い感覚。これが恋人同士であれば蕩けてしまうだろうに、漓朱には苦痛で仕方がなかった。
驪珀の洗練された雰囲気そのものの、凛とした品の良い香りが漓朱の鼻を擽(くすぐ)る。
驪珀に抗う事が出来ずに、なされるがまま甘い吐息を零すしかない。人が嫌いだと言うのに、なぜこんな事をするのか漓朱は理解に苦しんだ。
「……良い反応だな、面白い。漓朱よ、我は一月程此処を離れる。そなたがその間この部屋から出る事は許さない」
もう漓朱はこれ以上意識を保つ事は出来ず、霞む視界の中彼の不敵な笑みを目に焼き付け眠りに就いたーー。
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