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「漓朱様、漓朱様っ! 起きて下さいませ、主様が間も無く到着致します!」
「あ、あの……漓朱様、どのお着物に致しますか? 私はこちらが良くお似合いになるかと思うのですが……」
朝露の香りで肺が一杯になるくらい、朝早くに起こされる漓朱。
陽はまだ優しく、ゆるりと瞼を撫でる程度の弱いもの。
遠慮がちに躯を揺さぶられ、漓朱は仕方が無く重たい瞼を開けた。
まだ眠たくて眠たくて仕様がない。寝呆けているからか、焦っている様子の二人がとても不思議に思え、彼女は小首を傾げた。
「嗚呼漓朱様、今直ぐに湯浴みをしなければなりませんよ!」
「お、お手伝い致します……漓朱様、おみ足を失礼しますね」
動きの早い、いかにも気が強そうな少女とは正反対の、のんびりと動く草食動物を思わせる気の弱そうな少女。
この対照的な二人は漓朱専属の侍女だ。彼女達は人である漓朱を嫌がる事なく、寧ろ好意的にお世話してくれている。
漓朱の足に触れた少女は、足首に頑丈に嵌められている錠の鍵を哀し気な眼差しを向けながら開けた。
じゃらりと鎖が外れ、漓朱は自由になったそこを満足気に見遣り優しく撫でる。
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