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「……変わった事は何もなかったか?」
表情一つ変えず訊ねた驪珀に二人は恐縮し、敬愛している者にするそれと同じ様に腰を落として頭を下げる。
「いえ、何もございません」
答えたのは星羅。蘭華は口を閉じたまま、目の前に居る驪珀の気迫に気圧されている。
「ならば良い。……そなたらは下がれ」
「はい。では失礼致します」
そそくさと邪魔にならないよう部屋から出て行った二人に、漓朱は不安の色を隠せない眸を向けた。
久しぶりに見た驪珀。やはり初めて会った時と変わらない怜悧な美貌は、彼の冷たい雰囲気をより一層深めている。
怖がらずには居られない。絶対零度の眸は漓朱を震え上がらせるのに、充分すぎる程だ。
「我が恐ろしいか……?」
淡々と紡がれる言葉に漓朱は緊張から唾を飲み込み、どっどっどと動悸の激しい胸をきゅっと強く握り締めた。
不意に伸びて来る驪珀の腕。何か気分を害す事でもしてしまったのだろうかと、漓朱は強く目を瞑ってしまう。
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