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前に首を絞められたと言う事が尾を引いているのだろう。苦しい思いをさせられるのではないかと、漓朱は反射的に思ってしまったのだ。
「……え……」
しかし、驪珀はそんな事をするつもりはなかった。只、何となく漓朱の髪を触りたかったのだ。
ふんわりと柔らかい彼女の髪は気持ち良く、驪珀は壊れ物に触れるかの如く優しい手付きで撫でている。
湯浴みをしたばかりだからか、漓朱から強く香る石鹸の匂い。
「あの……」
怯えながらも澄んだ眸で己を見上げる彼女の姿は、嫌いではない。しかしやはり人を好きにはなれず、眸は冷たいままだ。
驪珀は困った様に眉を下げている漓朱を見下ろし、何だと言わんばかりに目を細めた。
「……この世界について知りたーー」
「知って何になる? そなたは只我の言う事を利いていれば良い。……傀儡(かいらい)人形に知識など不要だ」
「私は貴方の人形等ではないし、なるつもりもない。……神だか何だか知りませんが、人を思い通りに出来ると思わないで下さい」
売り言葉に買い言葉。ついつい言い返してしまった漓朱は己の立場を良く解っていたが為にやってしまったと頭を抱え、ちらりと驪珀の様子を窺った。
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