捧げられたこの身

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  XXXXX年。人類は進み過ぎた科学のせいで、絶滅し掛けた。 自然に勝とうとした愚かな人間。そんな強欲が、眠りに就いていた恐ろしい神を呼び覚ましてしまったのだ。 いくら科学を進化させたって、偉大なる自然には成す術がなく……。 吹き荒れる風、荒れ狂う海に絶え間なく落ちる雷。 神の怒りを表したかのように激しく岩礁(がんしょう)を噴き出す山々や広がる伝染病により、一握りの人間しか生き残らなかった。 科学を奪われた人類は古代の人々のような生活を送る事しか出来ず……。 病が流行ったり、大地、天が荒れれば“生贄”を捧げ、生き延びる。そんな時代になってしまっていた。 彼女は今回捧げられる生贄。 神など居る訳ない。幾ら祈ったって、幾ら縋り付いたって、姿を現さないのだ、信じられる筈がない。 彼女は十八年間そう考え生きて来た。 なのに今、皮肉にも神への供物として着飾られ運ばれている。  
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